2)医薬品の開発に必要な「新薬候補の探索」を知る!

            医薬品コンサルタント, 開発, 承認取得,  
                                             第1回目の「お薬」の開発の流れの話は、分かりましたか?

                                                           大体の流れは理解できました。薬の開発に、こんなに長い時間と多くの試験を行うとは知りませんでした。

  今回から、もう少し詳しい内容で、「お薬」の開発に関する話をしますので、理解を深めてもらえればと思います。それでは、今日は「新薬候補の探索」の説明を行います。

  第2回目は、「お薬」を開発する際の入り口となる「新薬候補の探索ないしは開発化合物の発見」について、お話しします。

  ここでは、以下の7つのポイントについて、説明します。

     (1)化合物ライブラリーのスクリーニングによる新薬候補の探索
     (2)他の製薬会社、大学等の研究機関の間での化合物ライブラリーの相互利用
     (3)他の製薬会社、大学等の研究施設の間での研究開発の提携
     (4)人工知能(AI)を活用した新薬候補探索の短縮化
     (5)各疾患の発症メカニズム解明を基にした、新薬候補品の探索
     (6)ドラッグリポジショニングによる新しい適応症の拡大
     (7)新薬候補品を有するベンチャー企業の買収等

   それでは、順番に説明したいと思います。

(1)化合物ライブラリーのスクリーニングによる新薬候補の探索   
・多くの製薬会社では、過去の新薬候補品の探索の研究で合成した化合物や、外部から入手した化合物を保管し、「化合物ライブラリー(数10万の化合物を持つ企業もあるが、可能性ある化合物は、その何十倍もあると言われている)」を構築しています。1990年代に、新薬候補品の探索研究では、標的分子に対して数万、数10万の化合物ライブラリーから薬理活性を持つ候補品を網羅的に探索するハイスループットスクリーニング(HTS)技術が誕生し、日本でも導入されています。このように、数多くの化合物ライブラリーから先ず薬理作用のある候補品を見出し、さらに、効果の強い化合物を合成して、新薬に適した候補品を見出す方法が用いられてきました。
現在、低分子の新薬候補品のターゲットは少なくなってきているので、最近では低分子以外の抗体、核酸、ペプチドに候補品を見出そうとしている企業が多くなっています。

今日は私からも質問してもいいですか?   ハイスループット・・とは、何ですか?

もちろんいいですよ! この機械は、大量の化合物の生物学的及び生化学的活性を、速やかに分析するシステムで、それを実現するため、液体処理、ロボット工学、人工知能、高感度検出器、高速データ処理・管理ソフトウエア等の先端技術が用いられています。

(2)他の製薬会社、大学等の研究機関の間での化合物ライブラリーの相互利用
・各製薬企業や大学などの研究機関の間で、これ迄独自に構築してきた、それぞれの化合物ライブラリーを相互に提供して、それぞれの方法で新しい候補品を見つける方法が行われています。

(3)他の製薬会社、大学等の研究施設の間での研究開発の提携
・上記と同じような意味合いで、各製薬企業や大学などの研究機関が、それぞれ独自に研究してきた成果を持ち寄って、新たな候補品の探索のための研究開発の提携を行っています。

(4)人工知能(AI)を活用した新薬候補探索の短縮化  
・化合物ライブラリー設計の使用される技術に関し最近では、人工知能(AI)を活用して、判定制度の向上や各種の測定値の予測度の向上に用いられています。

(5)各疾患の発症メカニズム解明を基にした、新薬候補品の探索   
・化合物ライブラリーから、その疾患に効果があるものをスクリーニングして、候補品を見つけ出すのではなく、ある疾患の発症メカニズムが不明の場合に、その発症メカニズムを、先ず解明して、その研究で明らかにされた疾患関連遺伝子やタンパク質が、実際の治療や新薬の候補品になり得るか検討する方法も行われています。

(6)ドラッグリポジショニングによる新しい適応症の拡大
・ドラッグリポジショニングとは、ヒトでの有効性や安全性が確認され、既に発売されている既承認薬について、他の適応症への効果を検討して、効果が見られたものについて、別の疾患に対する新たな治療薬として開発する方法です。 既承認薬については、物理化学的な特性、安定性試験、非臨床試験、臨床第1相試験等は既に実施され、ヒトへの安全性も確認されている事から、新たな適応症に対する有効性を証明すればよいことになります。従って、開発期間の短縮、開発コストの低減等のメリットがあり、ここ10年位の間に多くの薬剤が、この方法を用いて新たな適応症の開発を行っています。

(7)新薬候補品を有するベンチャー企業の買収等
・最後は、科学的な手法ではありませんが、現実問題として、新規の候補品を見つけるのは、極めて難しいことから、既に新規の候補品を開発したベンチャー企業等を丸ごと買収して、その候補品の開発を行うこともあります。

新薬の候補品を幾つも作って、実際発売されるのは、どの位の確率ですか?

2万~3万の候補品の内、1製剤位が発売に漕ぎつけると言われてます。

【今回のお話の纏め】

今日は、「お薬」の開発の最初のステップとなる「新薬候補の探索」について話をしました。以前は、化合物をたくさん作って、ひたすらスクリーニングを行って、効果があって、安全な候補品を見つける作業が行われてきました。その後、ハイスループットスクリーニングの導入により、その作業が高速化されるともに、効率よく新薬の候補品を見つけられる研究も進みました。しかしながら、本当に有用な薬剤は、数年に1薬剤見つけられれば良いほうで、ある疾患に優れた有効性があり、副作用が殆どなく、臨床における治療体系を変えるような画期的な薬剤は簡単には見い出せないのが現状です。

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