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4)医薬品の開発に必要な「臨床試験」を知る!

              医薬品コンサルタント, 開発, 承認取得,  
                                                今日は「臨床試験」のお話と聞いていますが、第1回目の時に臨床試験を始めるには、事前にPMDAに治験届を出す必要があるとのことですが、それは何故ですか?

臨床試験、正確には「治験」といいますが、治験を開始する前にPMDAに治験届を出すのは、ヒトを対象とした治験を行なうに際し、保健衛生上の危害の発生を防止するため、必要な検討がなされているか、得られた成績に問題になる事はないか、安全性は担保されているか等をPMDAが確認し、初めてヒトに投与する治験では、提出後30日間を経過してからでないと、治験施設に治験の依頼を行う事が出来ないという制度があるからです。

                   PMDAのサイトへ

   

第4回目は、ヒトを対象とした「治験」について、次の3つの試験について説明します。

        (1)臨床第Ⅰ相試験
        (2)臨床第Ⅱ相試験
        (3)臨床第Ⅲ相試験

それでは、順番に説明したいと思います。

(1)臨床第Ⅰ相試験
・臨床第Ⅰ相試験では、通常は同意を得た少人数の健康成人男性を対象にして、少ない量から順に新薬候補品の用量(5用量位)を増やしていき、安全性(どの量まで副作用が殆どなしに投与できるか)について調べます。また、同時に血液や尿を採取し、身体の中にある新薬候補品の成分の量を測定し、どの位の割合で吸収され、どの位の時間で最高血中濃度に達するか、どの位の量の成分が身体の中にあるか、どの位の時間で身体の外に排泄されるかを検討します(これらは、動物で行った試験と比べて、推定した通りの結果が得られてるか等を検討する事になります)。尚、抗がん剤等、新薬候補品の種類によっては、この段階から患者さんを対象にして治験を行う事もあります。

(2)臨床第Ⅱ相試験  
・臨床第II相試験では、同意を得た100人から200人位の目標にした疾患(例えば、高血圧症)を有する患者さんを対象として、3~4の用量の新薬候補品を投与して、効果(高血圧症なら血圧低下作用)や安全性を比較・検討し、用量や投与間隔や投与期間等について、適切な条件を探す試験を行います。この場合、新薬候補品の他に、プラセボ(薬理作用のないもので、外観上は新規候補品と区別がつかないような偽薬のこと)も投与して、第1回目のテーマの時に説明しました二重盲検試験と同じように、主観的なバイアス(思い込み)を除いた方式を用いて試験を行う事が多いです。

(3)臨床第Ⅲ相試験
・臨床第III相試験では、ヒトに対する効果が見られ、安全性に問題ないことが確認できた場合に、同意を得たさらに多くの目標とした疾患を持つ数100人から1000人を超える患者さんを対象として、新薬候補品と従来用いられてきた既存薬(既存薬がない場合には、再度プラセボを用いる)を用いて、有効性、安全性を比較する検証的な試験(検証的とは臨床第Ⅱ相試験で見られた効果と安全性が正当な成績をあったことを確認すること)を実施します。通常、この試験では、先ほどもお話ししましたが、  第1回目のテーマでお話した二重盲検試験を用いて、医師も患者さんもどちらの薬剤を服用しているか分からないようにして、主観的なバイアス(思い込み)を除いた方式で試験を行います。また、この試験とは別に、新薬候補品を目標とした疾患を持つ患者さんに、1年位の期間に渡り投与する長期投与試験を行う事になります。

     以上のように、治験を行う場合には、少数例の健康成人男性から始めて、安全性を確認しながら、徐々に患者さんを対象とした試験を行い、患者さんの人数を徐々に増やして慎重に行うことになります。また、前回ご説明したように、治験を実施する場合には、必ず、GCP(臨床試験の実施の基準に関する省令に示された基準 : Good Clinical Practice)に基づいて実施する必要があります。

次に、患者さんを対象とした個々の治験がどのように実施されているかについて、細かなフローを以下に示します。

・手順としては、大まかに説明すると、初めに治験実施計画書、治験薬概要書、試験成績調査表、患者さんへの同意書及び同意説明文書等の治験に関する資料を作成します。
・次に、治験を実施を依頼する病院の選出、代表責任医師の選出など治験を実施するための体制づくりを実施します。
・体制が出来上がったら、PMDAへ実施する治験の治験届を提出して問題がなければ、治験を実施する全国の病院(30~100施設位)の院長、責任医師、薬剤部、検査部、看護師、事務局、治験コーディネーター(CRC) に対して治験の依頼を行います。
・各病院内で治験を行う体制を整備した上で、治験の説明会を全国規模ないしは病院毎に行います。この時点で、各病院に「治験薬」を設置します。
・次に治験に参加する患者さんの募集を行って、同意が得られた方を対象に新薬候補品等を投与して、治験を実施します。
・3か月から1年位の投与期間の間に得られた、新薬候補品の効果(例えば、血圧値の低下の程度)、安全性(副作用の発現の有無)、臨床検査値等のデータを試験成績調査表で全国の病院から収集します。
・集められたデータは、製薬会社等の統計解析分門で集計、解析し、治験成績の結果が出てきます。
・得られた結果を基に報告書(治験総括報告書といいます)を作成して、1つの試験が完了することになります。

尚、図の中に出ている、SMO、CROとは以下の事を意味してます。
・SMO(治験施設支援機関、Site Management Organizationの略)とは治験を実施する病院やクリニックと契約し、治験の仕事を支援する企業のことを言います。治験に関わる医師や看護師、事務局や製薬会社の仕事を支援することにより、治験の品質・スピード向上の支援をしています。業務を担当する人はCRC(Clinical Research Coordinator)と呼ばれています(比較的大きな病院では、病院で雇用されたCRCがいる場合があります)。
・CRO(医薬品開発受託機関、Contract Research Organizationの略)は製薬会社からの委託を受け、主に医薬品開発における臨床試験や製造販売後調査及び安全性情報管理を行う企業です。業務を担当するする人はCRA(Clinical Research Associate)と呼ばれています(製薬会社内でモニターの仕事をする方もCRAと呼ばれてます)。

【今回のお話の纏め】

  非(前)臨床試験で得られた試験成績を基に、ヒトに新薬候補品を投与した時の効果や安全性の予測を行い、明らかな効果が見られ、副作用があまり見られない場合には、ヒトを対象とした臨床試験(治験)を行うことになります。治験のやり方としては、先ずは、健康な成人男性に対し、少ない用量から1回投与し、問題なければ、用量を少しずつ増やして、検討を行い、次いで安全と思われる用量で1週位の反復投与を実施します。次に疾患を持った少数例の患者さんを対象とした臨床第Ⅱ相試験を行い、ヒトにおいて有効で安全な用法・用量、投与方法の検討を行います。ここまでのデータで、問題がなければ、申請前の最後の試験として臨床第3相試験が比較薬(既存薬ないしはプラセボ)との、二重盲検試験を行って、比較薬よりも優れた効果が得られ、より安全な成績が得られるかどうかの検討が行われます。

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