「頭頚部癌」に対する光免疫療法の現状について

 癌の光免疫療法としての「セツキシマブ サロタンカンナトリウム(遺伝子組換え)製剤」は、米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆先生(関西医科大学光免疫医学研究所所長)が開発し、楽天メディカルが支援して、2020年9月に条件付き早期承認制度により、世界で初めて承認を取得し、現在臨床第Ⅲ相試験を継続している新しい薬剤である。光免疫療法は、①手術療法、②薬物療法、③放射線療法、④免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤等)に次ぐ、第5の癌治療法になり得ると期待されている。
 セツキシマブは、癌細胞に発現するEGFR(上皮細胞増殖因子受容体)に特異的に結合する抗ヒトモノクローナル抗体の抗悪性腫瘍剤である。光免疫療法では、この抗体に光感受性の色素を組み込み、初めに薬剤を体内に注入して癌細胞のみと結合させる、その後、人体には影響を与えないレーザー光(近赤外光)を5分程度照射すると、抗体と結合した癌細胞のみを選択的に破壊し、正常な細胞は傷つけないので、身体の免疫力に影響することなく、治療が出来る。当該療法の分子レベルでの詳細な機序等については、不明な点はあるが、レーザー光を照射することで、腫瘍細胞の細胞膜上に発現する EGFR に結合した本薬が励起され、腫瘍細胞を傷害することが期待される局所治療であり、早期臨床試験で、既存の治療法より、有益な効果が示された事から承認が得られた。
 現在は、「切除不能な局所進行又は再発の頭頚部癌」のみの適応であるが、食道癌、胃癌の治験を実施中で、適応症の拡大が期待されており、2022年2月15日現在で国内では40施設程度で使用可能となっている。
 副作用としては、出血、部位周辺の浮腫と疼痛、アレルギー反応、光過敏症等が見られ、既存の治療法に比べて副作用は少ないことが期待されるが、日本人患者さんに対する安全性情報は少ないことから、さらに安全性情報の収集が求められている。
 治療費は700万円位とされたが、現在は公的医療保険の適用対象になっており、高額療養制度を使用すれば患者さんの負担は、月数万から数十万で済む(尚、民間の保険の対象になるかは会社によって対応が異なっている)。初日に薬剤を投与し、2日目にレーザー光を照射し、その後1週間後に退院可能(これを最大4回繰り返す)となるので、患者さんの負担は少なくなると期待される新しい癌治療法である。