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11月7日の朝日新聞に、“「老化抑えるサプリ」ひしめく通販商品” と題した記事が出ていましたが、その後いろんなメディアを注意して見ていると、確かにいたる所に、いろんな会社のNMNの広告が出ている事に気が付きました。『人生100年時代』に呼応する勢いで、多くの製品が販売されているようです。
「若返って寿命が延びるかもしれない」と期待されているのは、NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)というものです。この物質の製品区分としては医薬品や医薬部外品のように何らかの薬理作用があるものではありません。また、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)のように、薬理作用はないものの、何らかの機能性を表示できる範疇にも該当しない『いわゆる健康食品(薬理作用もないし、機能性も表示できないもの)』に該当します。
● 尚、株式会社CloudNineのNMNは2023年5月25日にRefeelas(リフィーラス)という商品を機能性表示食品として消費者庁に届出ています。しかし、この届出表示は「本品にはNMNが含まれるので、肌が乾燥しがちな方の肌の潤いおよび肌弾力を維持し、肌の健康を助ける機能があります。」という内容で、『老化を抑えるサプリ』とは、少し異なるように思えます(肌のたるみは生理学的な老化と言えるかもしれませんが、老化の一部でしかないと思います。2023年11月16日時点の確認)。
NMNが期待される理由については、どの製品にも、以下のような同じような説明がされています。
・NMNは、ビタミンB3から生成され、生体内でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変わります。
・NADはヒトが生きるうえで欠かせない補酵素で、加齢とともに減少し、細胞や臓器の低下につながると考えられています。従って、老化はNADが減少することによって起こり得る可能性があります。
・一方、ヒトにはサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)という遺伝子があり、老化と寿命の制御に大事な役割を果たしていると言われています。
・NADは、この長寿遺伝子を活性化すると考えられており、加齢と共に減少するNADを、NMNを投与することで増加させることにより、老化の抑制に繋がる可能性があり得ます。
・現段階では動物試験の成績しかなく、ヒトでも同じような事が生じるかは、分かっていませんが、ヒトでの研究も始まっており(安全性に関する臨床試験は一部の製品で行われています)、今後の結果が期待されています。
幾つもあるNMN製品について調べた所、大手では「三菱商事ライフサイエンス」、「大正製薬」、「NOMON(帝人の子会社」、「日清ファルマ」等で、その他に多くの会社がNMNの製品を発売しています。販売されている製品の内容は千差万別で以下のような違いがあります。
① 1ヵ月(30日分)の販売価格が、1万円前後から12万円位するものまである。
② 1日当りのNMNの含有量が、100㎎から600㎎位まである。
③ NMN1㎎当りの単価も、1円前後から、20円位するものまである。
④ NMN単品の製剤から、NMNの他に、レスベラトロール(ポリフェノールの1種で、サーチュイン遺伝子の働きに関与しているという報告があります)等を配合しているものもある。
⑤ NMNの純度は99%、99%以上、あるいは99.9%含まれると記載されている。
⑥ GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理及び品質管理の基準)の認定工場で製造されている(認定されているか不明の製品もある)。
⑦ NMNの原料が国内製造製品である(輸入品の場合も多くある)。
● 医薬品のGMPは、製造所の法律上の許可要件になっているのに対し、健康食品のGMPガイドラインは、事業者による自主点検結果を第三者(認定機関)が認証する民間主導の制度となっています。尚、GMP認定工場で製造された健康食品であることが認められた場合には、認定機関より、GMP認定工場で製造された製品に「GMP製品マーク」の表示の承認が行われます。
以上のように、「老化を抑えるかもしれない」と言われているNMNが、通販サイトを中心に話題が沸騰しています。これに対し、朝日新聞が大手通販サイトの楽天とアマゾンで人気の商品について、NMNが包装に表示されている通りに含有されているか調査したところ、NMNが検出されない商品が複数ある事が確認されています。医薬品でもない、保健機能食品でもない、『いわゆる健康食品』だから、規制が緩い事に起因しているかもしれません。
今後、ヒトを対象とし、対照群と比較した臨床試験を実施して、少なくとも何らかの老化の衰えが抑えられるような機能性が表示できる製品が出てくれば、『人生100年時代』に大きく貢献することが期待されると考えられます。
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