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6)医薬品の開発に必要な「承認申請」を知る!

              医薬品コンサルタント, 開発, 承認取得, 

こんにちは! 今回は新薬候補品の発売前の最後ステップである「承認申請」のプロセスについてお話します。

                                 いよいよ、新薬候補品の承認が取れるかどうかの重要なステップになるという事ですね!

第6回目は、新薬候補品の承認申請について、次の4つのステップをお話しします。

       (1)申請資料の作成及び当局への申請
       (2)新薬候補品の承認審査のプロセス
       (3)新薬候補品の薬価の取得
       (4)新薬の発売

それでは、それぞれのステップについて、詳しく説明します。

(1)申請資料の作成及び当局への申請
・新薬候補品について実施した全ての試験が終了したら、厚生労働大臣(PMDAを介します)へ申請するため、申請資料を作成します。この資料を作成するには、前回お話ししたCTD(コモン・テクニカル・ドキュメント)の書式に従って、数か月掛けて資料を作成する事になります。

                 PMDAのサイト:ICH M4 / CTD

・CTDは、平成12年に日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)によって初めて合意され、平成13年から実際にCTDを利用した承認申請が行われるようになりました。また、平成14年には ICHによって、CTDを申請側から審査側に電子的に提出する「電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)」が合意され、更なる効率化のため、eCTDによる申請が行われています。
・CTDは5つの部(モジュール)で構成されていて、第1部(モジュール1)については各地域に特異的な部分になります。第2部から第5部迄(モジュール2から5)は、全ての地域への申請において共通となるよう構成されています。
・CTDの各モジュールに記載する内容は以下のようになります。

1) 第1部(モジュール1) 申請書等行政情報及び添付文書に関する情報
・この部には、例えば、当該地域における申請書又は添付文書(案)といった各地域に特異的な文書が含まれます。
2) 第2部(モジュール2) CTDの概要
・第2部(モジュール2)は、薬理学的分類、作用機序及び申請する効能又は効果等の新規候補品の全般的な概略から記載する事にします。記載順としては以下の順番で7項目を含めます。
      1.CTD全体の目次
      2.緒言
      3.品質に関する概括資料
      4.非臨床試験に関する概括評価
      5.臨床試験に関する概括評価
      6.非臨床試験に関する概要
      7.臨床試験に関する概要
3)第3部(モジュール3) 品質に関する文書    
・品質に関する資料を、ガイドラインに記載された様式で添付する。
4)第4部(モジュール4) 非臨床試験報告書
・非臨床試験報告書を、ガイドラインに記載された順序で添付する。
5)第5部(モジュール5) 臨床試験報告書
・臨床試験報告書及び関連資料を、ガイドラインに記載された順序で添付する。

CTDの構成の概念図は以下のようになります。

     CTD構成の概念図

・申請資料の作成について、纏めてみると、第1層(つまり第1部)の部分には、新薬候補品の起源、発見の経緯、開発の経緯、効能・効果、用法・用量、その他の設定根拠、海外での発売状況等全般的な事を纏め、さらに申請する各国特有の文書を纏めることになります。典型的なのは、「お薬」の箱の中に入れる説明文書の案(お薬では「添付文書」と言います)等が挙げられます。
・また、この他にも、医薬品リスク管理計画(RMP : Risk Management Plan)の案を作成し、申請資料に含めることになっています。RMPとは、新薬候補品毎に、(ⅰ)重要な副作用(安全性検討事項)、(ⅱ)市販後に実施される情報収集活動(医薬品安全性監視活動)、(ⅲ)医療関係者への情報提供等の新薬候補品使用時のリスクを減らすための取り組みを纏めた資料です。

(2) 新薬候補品の承認審査のプロセス
  
次に、新薬候補品の承認審査プロセスについて、下図の「新医薬品承認審査のプロセス」に従って、4つのステップに分けて説明します。

      1)新薬候補品の申請資料の審査
      2)新薬候補品の非臨床試験のGLP適合性調査及び臨床試験のGCP適合性調査
      3)新薬候補品の製造所のGMP適合性調査
      4)薬事・食品衛生審議会への諮問と厚生労働省大臣の承認

 それでは、1項目ずつ順番に説明します。
1)新薬候補品の申請資料の審査  
・申請資料は、先ずPMDAに提出しますが、PMDA内では審査するための「審査チーム」を作り、そこで提出した資料を細かく審査します。しばらくするとPMDAから審査資料に対する200~300 の質問事項(照会事項と言います)が届きます。その回答を作成し提出すると、製薬会社と審査チームで「面接審査会」を開催して(PMDAに出向いていきます。通常、企業側の外部の専門家にも同席してもらいます)、主要なポイントについて意見交換が行われます。PMDAは、それを基に審査報告書を作成します。この際、PMDAサイドでも外部の専門家との専門家協議を行って、審査内容に対する協議を行ってます。問題点が指摘されれば、審査報告書を修正して、最終の報告書が出来上がります。

2)新薬候補品の非臨床試験のGLP適合性調査及び臨床試験のGCP適合性調査
・申請資料の審査と並行して、
第3回目のテーマで説明した非(前)臨床試験の資料に対するGLP 適合性調査(書面、実地)、並びに第4回目のテーマで説明した臨床試験の資料に対するGCP適合性調査(書面、実地)が行われます。PMDAの調査官が会社を訪問し、資料がGLP、GCPの基準に基づいて実施されたものかを書面調査、並びに実際に会社内の関連部署を確認します。また、GCPの実地調査では、治験に参加した病院(3~4施設位)を実際に訪問して、事務局に保管されている資料、カルテ、医師、CRCへの質問等を行って、GCPの基準を満たしているか評価します。この評価結果は、先ほどお話しした「審査チーム」に報告されます。いずれかの調査で不適合の判定が出た場合には、申請を取り下げる必要があります。

3)新薬候補品の製造所のGMP適合性調査
・この話題については、
第8回目のテーマで説明する内容ですが、新薬候補品の承認審査プロセスでは、新薬候補品の成分(原薬)や製剤が、GMPa)の基準を遵守して製造されているかを、実際にGMP調査官が関連する製造所を訪問して評価するものです。これも調査結果によって、不適合な判定が出れば、申請を取り下げる必要があります。

a) GMPとは「Good Manufacturing Practice」の略で、製造所における製造管理、品質管理の基準のことです。原材料の入荷から製造、最終製品の出荷にいたるすべての過程において、製品が「安全」に作られ「一定の品質」が保たれるように、細かな基準が定められています。

4)薬事・食品衛生審議会への諮問と厚生労働省の大臣の承認
・PMDAの審査・調査を全てクリアーした場合には、厚生労働省の大臣が薬事・食品衛生審議会に申請資料の妥当性を諮問し、疑義が出されなければ、厚生労働省の大臣が新薬候補品を承認する事になります。

PMDA新薬審査第五部:医薬品の承認審査の概要ぺージ12
https://www.pmda.go.jp/files/000155539.pdf

(3)新薬候補品の薬価の取得
・医療用医薬品の価格は、「薬価(やっか)」と呼ばれています。薬価は、国の医療保険制度から、病院や保険薬局に支払われる時のお薬の価格のことで、製薬企業の資料等をもとに厚生労働省が決める「公定価格」になっています。つまり、製薬企業が勝手に薬価を決めることは出来ません。 
・新薬候補品について、最終的に厚生労働省の大臣の承認が得られたら、次に薬価収載のための申請をすることになります。手順としては「薬価基準収載希望書」に新しいお薬の有効性、安全性の特徴、リスクベネフィット、年間の患者さんの数、売り上げ予測等の必要な情報を記載して、厚生労働省の経済課に提出します。その後、薬価算定組織において検討が行われ、原則、申請後60日以内には薬価が決定し、収載されます(2月、5月、8月、11月の年4回)。

(4)新薬の発売
・新薬候補品の承認が得られれば、新薬として販売できるわけですが、それには、日本では「製造販売3役」を中心としたGQP(医薬品等の品質管理の基準に関する省令:Good Quality Practice)、並びにGVP(医薬品等の製造販売後安全管理の基準に関する省令:Good Vigilance Practice)の責任体制が構築され、「総括製造販売責任者」は製造販売業者(社長)の委任を受けて、GQPを管理する「品質保証責任者」、GVPを管理する「安全管理責任者」を管理・監督する体制が必要になります。
・また、「製造販売後調査」が実施できる体制が必要になります(製造販売後調査の話は、次回説明することになっています)。また、新薬候補品を開発するには、医薬品製造販売業の許可が必要ですが、通常の医薬品の流通経路としては、医薬品製造販売業者は医薬品卸売販売業者(いわゆる医薬品卸業者)に販売するので、販売業者との契約などの交渉も必要になります。

【今回の話の纏め】

 今回はいろんな用語が出てきて理解するのは難しかったかもしれませんが、要は流れとしては、実施した試験成績をCTDという書式で申請資料を作成し、それをPMDAに提出して、実施した試験の成績に関する疑義、不足している試験の有無、問題のある試験成績等の有無について協議し、PMDAとの「面接審査会」を経て問題がなければ、厚生労働省大臣が薬事・食品衛生審議会に諮問して疑義がなければ承認されることになります。一方、この過程で、申請資料の内容の他、GLP、GCP、GMPの適合性調査(これらの省令に照らして)で重大な問題が見つかれば、承認は得られないので申請を取り下げるしかないという事です。

 

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