7) 医薬品製造会社が、「諸般の事情により医薬品の販売を中止する」 とは、どういうことか?

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2021年以降に、一部の後発医薬品企業、医薬品製造受託会社、医薬品製薬会社で同じような薬機法の違反例が発覚し、業務停止処分及び業務改善命令を受けています。最近では後発医薬品企業の大手である〇井製薬が承認書と異なった作業を行ないGMP不適合の結果を受けているようで、この問題はもはや氷山の一角の話ではなく、何処の製薬会社でも起こり得る問題と考えたほうが良いようです。
こうした事件に端を発し、全国的に医薬品の供給不足が発生し、現在でも医薬品の供給不足の問題はまだまだ継続していているのが現状です。

こうした状況下で、最近、気になるのは、以下の示すように多くの会社で「【諸般の事情により】、既発売医薬品の販売を中止する」等の案内が出されている事です。

年月日 会社名(販売元) 製品名 事由
2021年2月第〇三〇エ〇ファ(株)タ〇スロ〇ン塩酸塩OD錠販売中止
     5月〇石製薬(株)D-ソ〇ビトー〇原末「〇〇イシ」販売中止
2022年11月〇本〇ミファ(株)イミ〇プ〇ル塩酸塩錠「〇ミファ」販売中止
2023年1月〇本〇ミファ(株)〇グリ〇ース錠「〇ミファ」販売中止
     2月〇田製薬(株)グル〇ハイ〇L販売中止
     3月日〇工(株)217品目販売中止
     4月〇生堂〇薬(株)エ〇ゾ〇ム細粒1%「〇G」販売中止
     5月〇林製薬(株)レ〇キ〇ン注販売中止
    5-6月〇ディ〇新薬(株)〇グリ〇ースOD錠「〇ED」取扱い中止
     6月〇居薬品(株)レ〇ッ〇カプセル販売終了
     7月〇峰堂〇品工業(株)〇ョウ〇リン錠販売中止
     7月日〇工(株)〇マル〇ット配合錠〇番「日〇工」出荷一時停止

 製薬企業が医薬品の販売を中止するは背景には、
 ・品質問題により製造再開が困難なため。
 ・物価上昇により、原材料などの調達コストが高騰しているため。
 ・成分が重複する製剤の統廃合をしたため。
 ・他社が製造販売元であるため。
 ・他社に代替品があるため。
 ・不採算品目から撤退する必要があるため。等等
 いろいろな理由により、製薬会社が医薬品の販売を中止せざるを得ないやむを得ない理由があるように思われます。
 しかしながら、「諸般の事情」とは、「1つではない複数の事情がある際」や、「言いづらい事情がある際」等に使われる便利な言葉ですが、周りに迷惑を掛けるときや不都合を与える場合には、「諸般の事情」と説明を省略するのではなく、きちんと事情を説明する責任があるように思えます。「諸般の事情」は相手への説明を省略する言葉であるため、日常的に使用すると「事情をきちんと話さない会社だ」という印象を与えるように感じます。
 結局は、厚生労働大臣から許可を得た正式な製造承認書通りに医薬品を製造するとなると、その分、新たな投資、人員が必要になり、該当する医薬品の安い薬価を考えると、品質改善に投資するよりは、販売を中止したほうが、解決策としては、会社には都合が良いからだと思いたくなります。
 最近、各社の医薬品の販売中止の案内文を読むと、右に倣えで「諸般の事情により販売を中止します」という説明をしており、ヒトの命を預かる医薬品会社には使ってほしくないと表現と考えます。

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